固定残業代とは?みなし残業の仕組みと求人票で確認するポイント

固定残業代の仕組み、超過分の支払い、基本給との区分など、求人票や労働条件通知書で確認したいポイントを解説します。

この記事のポイント

  • 検索した疑問に対する結論を最初に確認できます。
  • 判断するときの具体的な確認項目を整理できます。
  • 次に取る行動を順番に検討できます。

固定残業代(みなし残業)の罠|「固定時間を超えた分は追加支給の確認が必要である理由

【アイキャッチ画像】 イラスト:回転寿司の「食べ放題」のような看板が出ている会社。「残業し放題!定額プラン」と書かれており、疲弊した社員たちがベルトコンベアの上で働かされている。手前で主人公が「これっておかしくない?」と看板を指差している図。

「うちは『みなし残業』だから、何時間残業しても給料は変わらないんだよね」

先輩社員や上司から、こんなセリフを聞いたことはありませんか? あるいは求人票を見て、「固定残業代込み」と書いてあるから、「ああ、ここは残業代が出ない会社なんだ」と諦めてしまったことは?

はっきり言います。 その認識は、大きな間違いです。

もし会社側が「定額で使い放題(働かせ放題)」だと思っているなら、それは明らかな法律違反です。 固定残業代(みなし残業代)という言葉のトリックに騙されて、本来もらえるはずのお金をドブに捨ててはいけません。

今回は、多くの人が誤解しているこの制度の「罠」と、損をしないための見極め方を解説します。

「固定残業代」の正体は「前払い」である

まず、「みなし残業(固定残業代制度)」を正しく理解しましょう。 これは「残業代を出さない制度」ではありません。

正しくは、「毎月これくらいの残業が発生しそうだから、あらかじめ○時間分の残業代を『先払い』しておきましょう」という制度です。

スマートフォンの料金プランに例えると分かりやすいです。 「毎月5GBまでは定額パックに含まれます」というプランと同じです。

では、5GBを超えて使ったらどうなりますか? 当然、追加料金がかかりますよね。

残業代も全く同じです。 例えば「40時間分の固定残業代」が含まれている場合、40時間までは定額ですが、40時間を1分でも超えたら、会社は「追加の残業代」を払う義務があります。

「うちはみなしだから、いくら働いても給料は同じ」 これは、「スマホの定額プランに入っているから、100GB使っても料金は変わらない」と言っているのと同じくらい、おかしな理屈なのです。

見かけの月給に騙されるな

固定残業代制度の最大の罠は、「求人票の月給が高く見える」ことです。 しかし、中身を分解してみると、実は損をする構造になっていることがよくあります。

具体的に、同じ「月給25万円」の求人A社とB社を比較してみましょう。

▼ 月給25万円の求人比較(ボーナス2ヶ月分の場合)

【A社:全額が基本給】 ・月給:250,000円 ・内訳:基本給 250,000円 ・残業代:残業した分だけ、別途全額プラスされる

【B社:固定残業代込み】 ・月給:250,000円 ・内訳:基本給 190,000円 + 固定残業代 60,000円(40時間分) ・残業代:40時間残業して、ようやくトントン

この2つの会社、年収や待遇にどんな差が出るでしょうか?

【挿絵画像①】 イラスト:A社とB社の給与袋の中身を比較した図。A社の袋には大きな「基本給」の塊が入っている。B社の袋は「基本給」が小さく、その隙間を「固定残業代」という発泡スチロールで埋めてカサ増ししているイメージ。

ボーナス(賞与)が激減する 多くの会社では、ボーナスは「基本給 × ○ヶ月分」で計算されます。 A社:25万 × 2ヶ月 = 50万円 B社:19万 × 2ヶ月 = 38万円 → なんと、1回につき【12万円】も損をします。

残業単価が安くなる 残業代の時給単価は、基本給をベースに計算します。基本給が低いB社は、追加の残業代が発生しても、その単価はA社より安くなります。

退職金が減る 退職金も基本給ベースで計算されることが一般的です。長く働けば働くほど、その差は数百万円に広がることもあります。

「月給が高いから」と飛びつくと、実は「基本給が低く抑えられた求人」だった……というのはよくある話です。

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固定残業代で確認したい注意点

もちろん、正しく運用されている会社もあります。 しかし、求職者を騙すためにこの制度を悪用する「ブラック求人」も残念ながら存在します。 以下の特徴に当てはまる場合は要注意です。

固定残業代の内訳を確認するイメージ

1. 「何時間分か」書いていない 求人票に「月給25万円(固定残業代含む)」としか書いていないケース。 必要な明示が不足している可能性があります。法律上、「固定残業代の金額」と「それに相当する時間数(何時間分か)」を明記するルールがあります。 必要事項が明示されていない場合は、固定残業代を除いた基本給、対象となる時間数・金額、超過分の扱いを確認しましょう。

2. 最低賃金を割っている 例えば、「月給20万円(固定残業代80時間分含む)」のような極端な求人。 これを計算してみると、基本給部分が最低賃金(時給換算)を下回っている違法状態のことがあります。 固定残業代を除いた賃金を時間額に換算し、最低賃金を下回らないか確認する必要があります。

3. 「営業手当」などの名前に隠す 「固定残業代」とは書かずに、「営業手当」「業務手当」「役職手当」という名前で支給し、「これに残業代も含まれているから」と言い張るパターンです。 もしその手当に残業代が含まれているなら、求人票や雇用契約書にその旨を明記する必要があります。

入社前にチェック!「ホワイトな固定残業」の見分け方

では、どうすれば条件を正しく確認できるのでしょうか? 求人票を見る際は、以下の3点を必ずチェックしてください。

「超過分は別途支給」の一文があるか 求人情報では、「固定残業時間を超過した場合は、別途割増賃金を支給します」と必ず書いてあります。

固定残業時間が長すぎないか 「月45時間」を超える固定残業代が設定されている場合は注意が必要です(特別な事情がない限り、月45時間が法的な残業上限の目安だからです)。 最初から「限界ギリギリまで働かせますよ」という宣言かもしれません。

「基本給」の金額を見る 総支給額(月給)ではなく、「基本給」がいくらかを確認しましょう。生活の安定度やボーナスに関わる重要な数字です。

【挿絵画像②】 イラスト:虫眼鏡を持って求人票をチェックする探偵風のキャラクター。「基本給」「超過分は別途支給」という文字を見つけて、「ヨシ!ここは安全だ」と親指を立てているシーン。

まとめ:仕組みを知れば、搾取は防げる

  • 「固定残業代」は、残業し放題の定額プランではない。 ・決められた時間を超えたら、1分単位で追加請求できる権利がある。 ・「月給」の数字だけでなく、「基本給」とのバランスを見ることが重要。

「みなし残業だから仕方ない」と諦めるのは、今日で終わりにしましょう。 正しい知識を持っていれば、ブラックな求人を避け、あなたが正当に評価される会社を選ぶことができます。

もし今の会社の給与明細を見て、「あれ?おかしいな」と思ったら、まずは就業規則を確認するか、よりクリーンな給与体系の会社を探してみるのも一つの手です。

※個別の労働条件や法的判断は事情によって異なります。困ったときは労働基準監督署、労働局の総合労働相談コーナー、弁護士などへ相談してください。

給与と残業時間の構成を整理するイメージ
確認のポイント

固定残業代は、名称だけでは判断できません。労働契約書などの記載、会社からの説明、賃金体系での位置付け、実際の労働時間などを踏まえて判断されます。固定時間を超えた分の割増賃金は別途支払う必要があります。

参考にした公的情報

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