『 ブラック企業 』という言葉をよく聞きますが、実はこの『ブラック企業』という言葉は、厚生労働省では明確に定義されていません。ご存じでしたか?
筆者が考える『ブラック企業』とは、極端な長時間労働、過剰なノルマ、残業代・給与等の不払い、ハラスメント行為など、企業のコンプライアンス意識が低く、人材の使い捨てを疑われるような離職率の高い企業、一括りで表すならば「適法ではない労働環境であることを自覚した上で無視している企業」の総称ではないでしょうか。
転職時の企業選びをするとき、募集内容などを一見しても、ブラック企業かどうかは判断しにくいものです。
そこで、今回は「ブラック企業」を知るためにその見極め方と、労働者の知識として知っておくべき残業・休日労働に関する「36協定」について解説していきます。
■ブラック企業の見分け方

働いてみないと分からないことでもありますが、募集内容や企業のホームページ、就職・転職に関するWeb口コミサイトから、ブラック企業を見分けられるポイントはいくつかあります。
◇求人サイトでよく見かける募集広告企業
たとえば、多数の求人メディアに頻繁に求人情報を出している企業は、ブラック企業に当てはまる可能性が高いです。
その理由は、大量に退職者が出ることを想定して、もしくは実際に人材が定着しないという問題を抱えていて、求人情報を長期間、または頻繁に出している可能性があるからです。
もちろん、良い人材に巡り合いたいとか、業績が良く大量に人材を確保したいという企業も、同様に多数の募集を行う場合もありますので、一概に求人サイトへの掲載が多いからといってブラック企業だと決めつけるわけにはいきません。
そのため、同業他社の類似求人と比較してみて、
・賃金が好条件すぎたりはしないか
・明らかに専門知識が必要な業種なのに「未経験歓迎」などど書かれていないか
・試用期間の定めが無い、または長すぎる
あくまで一例にはなりますが、これらを判断材料にしてみてください。
賃金や待遇面は、求人広告側もチェックしていますが、高収入が提示されているということは、ノルマが厳しいとか時間外労働を強いられる可能性があり、提示された内容はブラック企業たる実態が、隠されているのかもしれないので注意が必要です。
◇就職・転職に関する口コミサイトの評価を確認

掲載されている口コミの内容は、ブラック企業を見分けるのに参考になりますし、特に現職者のコメントは説得力がありますので、評価の悪い口コミが多い会社は避けておいた方が無難でしょう。
もちろん、労働環境の条件はひとりひとり感じ方が違いますので、成長著しい企業が高い目標設定で躍進しているからと言っても、一概にノルマが厳しいと決めつけないように、多くの人の意見を見たり聞いたりすることも重要です。
例えば、外回りの営業職について口コミが「外回りがつらい」となっていた場合でも、それは一概にはブラック企業とは言えません。上司とそりが合わなかった方の個人的な感情もあるはずです。
大切なことは、「多くの意見を探したうえで、自分自身で判断をすること」です。
■「ブラック企業」が、求人広告でよく使うフレーズに着目
企業経営するうえで、当社だからこそという「売り」が無いと、業界で生き残っていくのは大変なことです。
仮に「売り」があっても、当然競合他社も各社「売り」を掲げて挑んできます。そのために、多少なりとも社員のノルマ達成を期待するのは、賃金を払う企業としては当たり前のことです。
しかし、ブラック企業は、会社の「売り」となるポイントが、ほとんどないことがあり、社員に驚くほどのノルマを課す会社もあります。
会社の売りがないと、求人広告で会社をアピールする内容は「自己裁量権が広い」「アットホームな企業風土」「やりがいを感じる仕事」「幹部候補急募」といった抽象的なキャッチコピーが使われていることが多々あります。
ブラック企業が求人で謡う上記の言葉は
「自己裁量権が広い」→「責任も押し付けられる」
「アットホームな企業風土」→「公私の区別はありません」「プライベートはありません」
「やりがいを感じる仕事」→「歩合制度があるので自分で稼いでください」
「幹部候補急募」→「中間管理職不在」
と、言い換えられるとか、られないとか。。。
また、仕事内容も「コンサルタント業務」が飛び込み営業だったり、「コールセンター業務」がテレアポ営業だったりする場合がありますので、業務内容が具体的に書いていない企業は、応募する前に事前に慎重に調査を行う方が無難と言えるでしょう。
■残業や休日労働に関する「36(サブロク)協定」とは

労働基準法には、法定労働時間(1日8時間/1週40時間)と週1日を法定休日とすることが定められています。
36協定とは、時間外労働と休日労働に関する協定で、1日の労働時間が8時間を超える、もしくは週の労働時間が40時間を超えるときに、労使間で結ぶ協定のことを言います。
※労使間=労働者、使用者の間。企業と社員のこと。
そして、 その時間を超えての労働や休日の労働をさせる場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出をしなければなりません。

つまり、労使間で36協定を締結せず、それを無視して規定以上の残業や休日労働をさせてしまうと、企業側は労働基準法に反することになり、処罰を受けることになります。
具体的には、36協定を結ばず、時間外労働の上限に違反した企業は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
このように労働環境の整備、労働基準法の厳守が行われていない企業も「ブラック企業」と言っても差し支えがないと思われます。
36協定は、皆さん労働者の就業スタイルと労働環境を守るための大事な協定ですから、厚生労働省のホームページで確認されることをおすすめします。
※厚生労働省【36協定】
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/saburoku/
■まとめ
厚労省のホームページを読みますと、36協定はもちろんのこと、労働トラブルに関して、正式な手順を踏めば原則として労働者の方が強い立場であることが理解できるかと思います。
ただ、そうは言ってもまずはトラブルが起きないことが一番です。ブラック企業への転職を避けるために、まずは自分が転職を希望する企業の雇用実態について、多くの情報を収集して企業選びを行ってください。
ブラック企業に勤め続けてしまうと、いつかは肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けてしまう可能性があります。
転職時に、多くの企業情報の収集や志望企業の実態を知るうえで、転職エージェントのアドバイスをもらうことも、転職活動の視野に入れられることをおすすめします。